【不動産の闇】那須塩原で見た、40年の時間が作り出した“負の資産”の真実
- Daisaku Kojoma
- 5月8日
- 読了時間: 4分
今回は、弊社が実際に行った不動産調査の現場で出会った、「バブルの遺産」が現代にもたらしているリアルな問題についてご紹介します。
◆ 調査地:栃木県那須塩原 ― 祖父が購入した「夢の土地」
依頼者の祖父が、1980年代のバブル期に100坪の土地を購入した那須塩原。今なお避暑地として人気の高い地域ですが、購入当時は現地すら訪れず、完全な投機目的でした。

◆ 緑に包まれた静寂の土地、しかし…
現地は美しい自然に包まれ、まるで森の中のようでした。とはいえ、40年以上手つかずの土地で、建築するには伐採・整地などの負担が必要です。
管理体制自体は丁寧で、境界杭も明確、所有者名が入った看板まで整備されていました。年間2万円の管理料を支払うことで管理が維持されています。
◆ 水道・温泉の“上納金”の存在
販売会社へのヒアリングにより、以下のようなコストが明らかになりました:
建物ありの土地売買時:水道名義変更料 約20万円
新規で水道を引く場合:88万円の上納金
温泉引き込み:一時金で190万円(10年ごとに更新)+ 年間使用料5万円
土地に建物を建てようと思えば、整地・水道・温泉費用だけでも数百万円が必要で、そこに建築費も加わります。こうした現実を前に、多くの区画が手つかずのままになっているのです。

◆ そして現れた、“不動産ビジネスの闇”
ここからが本題です。現地調査の合間に地元の不動産会社を訪問し、「大阪から来ました」と名乗ったところ、意外にもまったく驚かれませんでした。
不思議に思い理由を尋ねたところ、驚くべき話が語られました。
「この地域では、大阪の不動産会社からよく連絡があります。所有者に『現地調査をしてあげる』と言って、50~60万円の請求をする業者が多いんです。」
さらにこう続きました。
「『隣の区画も買い取れば買い手が見つかる』などと所有者を説得し、複数区画を買い増しさせて一括売却を狙う手口も見られます。」
これらの業者の多くが大阪に本社を置いており、地方の所有者の“不安”や“処分したい気持ち”に付け入って営業をかけているというのです。
まさに、出口のない土地につけ込む“ハイエナ型ビジネス”。法的には完全な違法とまでは言えなくとも、非常にグレーな手法です。
所有者にとっては、手放すこともできず、固定資産税と管理費だけがかかり続ける土地。そんな中、「買い手がいる」と言われれば、心が揺れるのも無理はありません。
◆ 実際に確認した現地の様子

現地に立っていた大阪の不動産会社の看板。ネット上にもこの会社に関するトラブルの口コミが複数確認できます。(現在はすでに廃業しているようです)
このように、こうした土地をターゲットとした「調査料ビジネス」「まとめ売却商法」が、地方のリゾート地で静かに広がっているのが現実です。
◆ 出口戦略はあるのか?
那須塩原は、観光地としての魅力が今も残るエリア。ホテルやリゾート開発の需要もあるものの、バブル期の細分化分譲により「まとまった土地」が存在しないという致命的な構造問題があります。
30人ほどの所有者が協力して一括売却する計画が進められたこともありますが、購入時の価格とのギャップや損切りへの心理的ハードルから、話がまとまらないのが現実です。
◆ 弊社からのご提案(非公開)
今回のご依頼者には、現地調査を踏まえたうえで、弊社なりの具体的な提案を行いました。ただし、内容は守秘義務のためここでは記載できません。
◆ 最後に ― 不動産は紙切れより恐ろしい現実もある
「不動産は現物だから安心」という考えは、時に幻想です。株のように“紙切れ”になるわけではありませんが、処分できずにコストだけがかかる実物資産は、時に“紙切れより怖い存在”になります。
持っているだけで資金が出ていき、使いたくても使えず、売りたくても売れない。これが現代の「負動産(ふどうさん)」の現実です。
不動産に関する調査・整理・出口戦略のご相談は、「人と不動産」へお気軽にご相談ください。
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